目次
この記事の要点
- 仕事が特定の人に集中するのは、引き受けるほど速くなりまた頼まれる循環と、会社側に切り出しを支える仕組みがないことが主な原因。性格や抱え込み癖の問題ではない
- ベテランの判断や勘所を言語化して記録する組織的な仕組みがある企業は16.5%にとどまる(株式会社taiziii調べ)
- 休めない状態を放置すると、本人の長時間労働に加えて、周囲の都度確認や手戻り、組織の業務停滞へと影響が広がる
- 個人でできる対処は、業務を「手順」と「判断」に分けて書き出すこと。手順書だけでは引き継いでも楽にならない
- 上司には不満としてではなく「自分が不在になると業務が止まるリスク」として伝えるのが通じやすい。管理職の74.5%はベテラン退職を経営リスクと認識(株式会社taiziii「企業の属人化・技術承継に関する実態調査」。この記事の他の数値とは別の調査)
- 辞めるかどうかは「改善の見込みがあるか」で整理する。辞める場合も、手順と判断の切り出しメモが自分を守る
自分が休んだ日、仕事はいつもと同じようには回りません。製造業の業務属人化リスクを扱った東京海上ディーアールのレポートは、製造現場の例を挙げています。同じ作業でも、主担当者と応援担当者とでは1つの作業サイクルにかかる時間に約1.8倍の開きがありました。
出典 東京海上ディーアール 犬塚俊之『製造業の業務属人化リスクとその対策』リスクマネジメント最前線・2023年6月20日 https://www.tokio-dr.jp/publication/report/riskmanagement/riskmanagement-379.html (倒産件数の原資料は東京商工リサーチ)
この差を最も強く感じているのは、主担当者本人です。自分にしか分からない仕事を抱えていると、休暇中も確認の連絡が入り、体調を崩しても業務を止められず、休むこと自体に後ろめたさを感じるようになります。それでも業務は回っているので、真面目な人ほど、断れない自分や抱え込む癖のほうを直そうとします。
ただ、負担を減らしたくても、仕事は誰かに渡せる形になっていません。忙しいときほど「教える時間で自分がやったほうが早い」という判断が働き、渡す機会はさらに減っていきます。別の仕事に誘われても引き受けられず、「辞めたい」と思っても引き継ぐ相手の当てがない。休むことも、減らすことも、辞めることも難しい状態が固定されていきます。
動けない原因は、性格でも能力でもなく、仕事が渡せる形になっていないことです。しかも渡す対象は手順だけではありません。例外が起きたときにどの条件を見て決めているのか。そこまで書き出さないかぎり、手順書を渡しても確認の連絡は戻ってきます。この記事では、仕事が特定の個人に集中する構造を調査データで確かめたうえで、個人でできる業務の切り出し方、上司への伝え方、辞めるかどうかを考えるときの判断材料を、抱えている本人の側から整理します。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・本調査2026年2月24日〜3月6日/追加調査2026年3月16日) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/ (公開ページは調査の概要とダウンロード案内で、設問ごとの数値は同ページで配布のレポートに掲載)
仕事が自分に集中するのは性格ではなく構造に原因がある

なぜ自分ばかりに仕事が集まるのか。真面目な人ほど、抱え込む性格のせい、断れない自分のせいと考えがちですが、仕事の集中には本人の性格とは別に働く要因が2つあります。1つは業務の割り振りで起きる循環、もう1つは会社側の仕組みの不在です。
引き受けるほど速くなるため次の依頼も同じ人に向かう
同じ業務を長く担当するほど、処理は速く確実になります。すると周囲から見て「あの人に頼むのが一番早い」状態になり、次の依頼もまた同じ人に向かいます。担当するほど経験が増え、経験が増えるほど周囲との差が開き、差が開くほど依頼が集まる。この循環は本人が囲い込んだせいで起きるのではなく、「早くて確実な人に頼む」という日々の合理的な選択が積み重なって生まれます。
循環が続くと、業務を渡す機会そのものが失われていきます。忙しいときほど「教える時間で自分がやったほうが早い」という判断が働き、教えることは後回しになります。後回しにするほど担当は増え、ますます教える時間が取れなくなる。こうして、誰も意図しないまま、仕事は特定の個人に固定されていきます。
ベテランの判断を記録する仕組みがある組織は16.5%にとどまる
仕事の集中が割り振りの循環だけで起きるなら、会社側の仕組みで止められるはずです。ところが、その仕組みを持つ組織は少数派です。当社調査で、ベテラン社員の判断の観点や業務の勘所を言語化・記録する取り組みについて聞いたところ、「組織的な仕組みがあり、定期的に記録・更新されている」と答えた管理職は16.5%でした。大半の組織では、記録は個人の裁量に任されているか、あっても一部の部署の取り組みにとどまっています。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・本調査2026年2月24日〜3月6日/追加調査2026年3月16日) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/
つまり、自分の職場に業務を切り出して渡すための仕組みがないのは、特殊な不運ではなく多数派の状態です。仕事が集中したまま解消されない理由も、本人の抱え込みや上司の怠慢より、切り出しを支える仕組みが最初から用意されていないことのほうが大きいはずです。この状態が長く続いてしまう背景は、別記事「属人化が解消できない理由」で整理しています。
休めない状態を放置すると影響は本人・周囲・組織の3つに広がる
仕事が集中していても、「回っているうちは大丈夫」と考えて現状を続ける選択はありえます。ただ、休めない状態を放置したときに何が起きるかは、本人・周囲・組織の3つの範囲に分けて見ておく必要があります。どれも、いつか起きるかもしれない話ではなく、多くはすでに起きていることだからです。
本人には長時間労働と途切れない緊張に加えて成長の停滞が起きる
自分にしかできない業務は、他の人に代わってもらえません。業務量を調整する余地がないため労働時間は長くなりやすく、休暇を取っても電話やチャットで確認が入り、休んだ実感が持てない状態が続きます。
長時間労働と並ぶ負荷が、途切れない緊張です。「自分が止まれば業務が止まる」という状況では、ミスへの許容度が下がり、体調を崩せないという緊張が常にかかります。さらに見落とされやすいのが成長の停滞です。同じ業務から離れられないため、新しい業務に挑戦する機会や異動の話が来ても受けられず、キャリアの選択肢が狭まっていきます。仕事を任される信頼の証だったはずの状態が、時間がたつほど動けない理由に変わっていきます。
周囲には都度確認と手戻りが集中し自立して動けなくなる
抱えている本人は「自分が我慢すれば周りに迷惑はかからない」と考えがちですが、実際には周囲にも影響が出ます。当社調査では、判断基準や勘所が十分に引き継がれなかったとき、業務にどんな影響が出たかを聞いています。上位3項目は次のとおりです(複数回答)。
| 業務への影響 | 回答率 |
|---|---|
| 自己判断ができず、前任者や上司に都度確認する必要があった | 31.5% |
| 業務の全体像が掴めず、応用的な対応ができなかった | 28.5% |
| 小さなミスや手戻りが頻繁に発生した | 27.0% |
何らかの影響があったという回答は約85%にのぼります。この設問が聞いているのは引き継ぎの場面ですが、業務が渡らないまま特定の人に残っている職場でも、不在時や応援時には同じことが起きます。判断基準が共有されていないと、周囲は都度確認するしかなく、確認できなければ手探りで進めてミスや手戻りが起きます。本人が休めないだけでなく、周囲も自立して動けない。属人化はこの両方を同時に生みます。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・本調査2026年2月24日〜3月6日/追加調査2026年3月16日) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/
組織では作業時間が約1.8倍に開き退職が事業継続に響く
組織の単位で見ると、特定の人への依存は作業時間の差として表れます。東京海上ディーアールのレポートが挙げる製造現場の例では、1つの作業サイクルの所要時間に主担当者と応援担当者で約1.8倍の開きがありました。これは同レポートの筆者が支援した1社での実測値であり、統計調査の平均値ではありません。それでも、主担当者が休んでいるあいだ、同じ工程が倍近い時間をかけて回る場合があることは分かります。
同じレポートは、2022年度の人手不足関連倒産79件のうち、従業員の退職や転職により事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が33件と最も多かったことにも触れています。製造業を中心に扱ったレポートであり、どの業種にもそのまま当てはめられる数字ではありませんが、特定の人に依存した体制が退職をきっかけに立ち行かなくなることは、業種を問わず起こりえます。休めない状態を放置した先に起きるのは、本人の疲弊だけではありません。業務そのものが続けられなくなることもあります。
出典 東京海上ディーアール 犬塚俊之『製造業の業務属人化リスクとその対策』リスクマネジメント最前線・2023年6月20日 https://www.tokio-dr.jp/publication/report/riskmanagement/riskmanagement-379.html (倒産件数の原資料は東京商工リサーチ)
個人でできる切り出しは業務を手順と判断に分けて書き出すことである

仕事を渡せる形にする第一歩は、立派なマニュアルを完成させることではなく、業務を「手順」と「判断」の2つに分けて書き出すことです。この分け方を知らないまま書き始めると、時間をかけて手順書を作っても負担が減らない結果になりがちです。
手順は渡っても判断は渡らない
当社調査で引き継ぎの際に困ったことを聞くと、最多は「暗黙知が共有されなかった」で79件(39.5%・複数回答)でした。手順書や資料が渡っていても、困りごとの筆頭に挙がるのは、資料に書かれていない知識です。
手順書に書かれるのは、何をどの順でやるかです。一方、受け手が実際に詰まるのは、例外が起きたとき、条件がいつもと少し違うとき、どちらとも取れるときです。「金額が合わないときはどこまで自分で処理してよいか」「この兆候が出たら様子見でよいか、すぐ報告か」。こうした判断の基準は本人の頭の中にあり、手順を書き出しただけでは外に出てきません。資料に残るのは決めた結果であって、どの条件を見てそう決めたのかは残らないからです。言葉にする作業がどこでつまずくのかは、別記事「暗黙知の形式知化が失敗する理由」で詳しく取り上げています。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・2026年2〜3月実施) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/
書き出しは手順リストと判断メモの2段階に分ける
書き出しは2段階に分けます。第1段階は手順リストです。業務ごとに、作業の順番、使うシステムや帳票、提出先と期限を箇条書きにします。ここは従来の手順書が扱ってきた範囲であり、書き方に迷うことは少ないはずです。第2段階が判断メモで、手順リストの各項目に次の観点を短い文で添えます。
- どんな条件のときに例外扱いにするか。例外にしたら誰に伝えるか
- 作業中にどこを見て異変に気づいているか(数字、相手の反応、時期など)
- 迷ったときに何を優先しているか(納期、品質、コストなどの順番)
- 過去に起きたトラブルと、そのとき取った対応、そう対応した理由
- 自分にも分からないとき、誰に聞けば分かるか
2つの層の違いを例で示すと、次のようになります。
| 書き出す層 | 何を書くか | 例 |
|---|---|---|
| 手順リスト | 作業の順番・使うシステム・提出先・期限 | 「毎月5日までに販売データを集計し、部長に送付する」 |
| 判断メモ | 例外にする条件・着眼点・優先順位・過去のトラブルと対応 | 「前月比で1割以上ずれていたら、送付前に営業に確認する。端数のずれなら備考に書いて送付する」 |
手順と判断が対になっていれば、受け手は例外に出会っても手が止まりません。書き出すときは、完璧を目指さないことが続けるうえで大切です。全業務を一度に書こうとせず、確認の連絡が最も多い業務から始めます。また、同僚と判断の基準が違う場面に気づいても、無理に正解を一本化する必要はありません。「自分はこの条件のときこう判断している」と、自分の基準として残せば十分です。誰の、どの条件での判断かが分かる形になっていれば、受け手はそのまま再現できます。
もっとも、自分の判断を自分で言葉にするのは簡単ではありません。長く担当した業務ほど判断の理由は意識されなくなっており、「なんとなくこうしている」としか言えない場面が出てきます。そのときは過去の具体的な事例を思い出し、「あのときなぜあの対応を選んだのか」「別の選択肢はなかったのか」と場面単位で問い直すと、条件と対応の組み合わせが言葉になりやすくなります。聞き役がいたほうが進む場合は、AIに質問役をさせて判断の材料を引き出す方法もあります。AIが判断を代わりに下すのではなく、質問を通じて本人から基準を引き出す使い方です。AIにどこまで任せられるかは、別記事「AIを使った業務引き継ぎの範囲」でまとめています。
引き継いだのに楽にならないのは渡したものが手順に偏るからである
「以前、後任に引き継いだのに、結局質問が全部自分に戻ってきた」という経験があると、書き出しても無駄だと感じるかもしれません。ただ、質問が戻ってきた原因は、説明のうまさや後任の理解力とは別のところにあります。当社調査では、引き継ぎにかけた期間は75.0%が1ヶ月未満でした。一方、後任が前任者と同等のパフォーマンスを発揮できるまでの期間は、58.0%が3ヶ月以上と答えています。別々の設問への回答であり、同じ回答者を追跡した数字ではありません。それでも並べて見ると、引き継ぎが形のうえで終わる時期と、後任が実際に戦力になる時期のあいだに数ヶ月の開きがあることが分かります。
この数ヶ月のあいだ、後任は前任者や上司への都度確認を続けています。つまり、引き継ぎのあとも質問が戻ってくるのは、説明が下手だったからでも後任の能力が低いからでもなく、渡したものが手順に偏り、判断が渡っていなかったからです。判断メモを添えた切り出しは、この開きを埋めるための書き方であり、過去に引き継ぎがうまくいかなかった経験のある人にこそ試す価値があります。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・2026年2〜3月実施) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/
上司には不満ではなく業務が止まるリスクとして伝える

負担を減らすには、書き出しと並行して、業務の再配分を上司に相談する必要があります。このとき「仕事が多すぎます」「休めません」と負担の大きさから伝えると、不満や愚痴として受け取られ、「調整しておくよ」という返事だけで終わってしまうことがあります。相談の中心に置くのは、次の3点です。
- 自分にしか分からない業務がどれか(業務名の一覧)
- 自分が不在になったとき、何がいつ止まるか(影響の具体)
- 切り出しの準備として何を作ったか(手順リストと判断メモ)
「大変です」ではなく、「この業務は、自分が1週間不在になると請求処理が止まります。切り出せるように手順と判断基準を書き出したので、渡す相手と引き継ぎ時間の確保を相談したいです」という形です。訴えの中心が自分のつらさではなく業務の継続に置かれているため、上司は個人の不満ではなく組織の課題として扱いやすくなります。
リスクの言い方が通じるのは受け取る側にも同じ危機感があるからである
上司や経営の側は、特定の人にしかできない仕事が失われることへの危機感をすでに持っています。当社が別に行った「企業の属人化・技術承継に関する実態調査」では、ベテラン社員の退職を経営リスクと感じる管理職は74.5%にのぼりました。
出典 株式会社taiziii「企業の属人化・技術承継に関する実態調査」(管理職(課長以上)200名・インターネット調査・2025年8月14日〜18日実施) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000163598.html
つまり「自分が抜けると業務が止まる」という伝え方は、上司が持っている問題意識と同じ言葉を使うことになります。退職をほのめかす駆け引きにもなりません。双方が同じリスクを見て相談する形になるので、業務の再配分や引き継ぎ時間の確保といった具体的な対応につながりやすくなります。逆に、リスクとして伝えても何も動かないなら、そのこと自体が、辞めるかどうかを考えるときの材料になります。
辞めるかどうかは気持ちの強さではなく改善の見込みで整理する
辞めたいという気持ちの整理は、自分を責める見方を外すところから始まります。仕事が集中したのは、任せられるだけの専門性と信頼があったからで、属人化そのものは専門性の裏返しでもあります。問題は専門性が高いことではなく、代わりがいない状態が放置され、休めない働き方が固定されていることです。残してよい専門性との線引きは、別記事「属人化とスペシャリストの違い」で扱っています。
改善の見込みは会社の仕組みと上司の反応と課題の扱われ方で見る
気持ちの強さだけで決めようとすると、「まだ頑張れるかもしれない」と「もう限界かもしれない」のあいだを行き来し続けることになります。代わりに置く判断材料が、いまの職場に改善の見込みがあるかという観点です。
| 見る対象 | 改善の見込みがあるサイン | 見込みが薄いサイン |
|---|---|---|
| 会社の仕組み | 業務の書き出しや引き継ぎを支える仕組みを作る動きがある | 仕組みの話が出ても具体化しない |
| 上司の反応 | 担当の再配分・引き継ぎ時間の確保・期限のある計画など、具体的な動きがある | 「落ち着いたら対応する」という先送りが繰り返される |
| 課題の扱われ方 | 属人化が組織の課題として会議や計画に載る | 本人の頑張りや工夫の問題として扱われる |
ベテランの判断を記録する組織的な仕組みがある企業は16.5%にとどまります。仕組みがないこと自体は多くの職場に共通するので、それだけで辞める理由にはなりません。見るべきは、切り出しの提案に対して組織が動くかどうかです。手順リストと判断メモを添えてリスクとして伝えるところまでは個人でできますが、渡す相手と時間を用意するのは組織にしかできません。準備を尽くしても具体的な動きが現れない状態が続くなら、環境を変える選択肢が現実味を持ちます。
辞める場合も切り出しメモが短い引き継ぎ期間から自分を守る
退職を選ぶ場合にも、手順と判断を分けた切り出しメモは意味を持ちます。当社調査では、引き継ぎにかけた期間は75.0%が1ヶ月未満でした。退職までの限られた期間で引き継ぎ資料をゼロから作るのは負担が大きく、「引き継ぎが終わらない」ことが退職時期の調整を難しくする要因にもなります。日頃からメモの形で書き出しが進んでいれば、退職を決めてからの作業は、渡す相手に合わせた補足に絞られます。
また、引き継ぐ相手が決まらないまま退職日を迎える場合でも、手順リストと判断メモを残し、保管場所を上司と共有しておけば、後任が決まったときに参照できる状態を作れます。在職中に書いたメモは、退職後に問い合わせが続く事態から自分を守り、残る側の混乱も減らします。どのくらいの期間を見ておくとよいかは、別記事「退職・異動の引き継ぎ期間の目安」で整理しています。
出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」(従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・2026年2〜3月実施) https://taiziii.com/knowledge-transfer-survey-2026/
よくある質問
属人化した仕事を抱えたままでもまとまった休みは取れるのか
不在中に判断を求められそうな場面を、先回りして書き出しておくのが現実的です。休暇前に「この条件ならこう対応する。この条件なら自分が戻るまで保留してよい」という判断メモを関係者に渡しておくと、不在中の確認連絡は減ります。最初から長期休暇で試すのではなく、例えば1〜2日の休みで判断メモの不足を見つけ、埋めてから期間を延ばしていくと、休める範囲を段階的に広げられます。
業務を書き出す時間がそもそも取れない場合はどうするか
まとまった時間を確保しようとすると始められないため、業務の合間に発生ベースで書くのが現実的です。誰かから確認の連絡が来たら、答えたあとにその内容をメモに1行足す。例外対応をしたら、条件と対応を1行残す。確認や例外は判断が求められた場面そのものなので、この書き方なら優先度の高い判断から順に文書になっていきます。あわせて、書き出しの時間を業務として認めてもらえるよう、上司への相談と並行して進めてみてください。
上司に伝えても状況が変わらないときはどうすればよいか
一度で変わらない場合は、伝え方を「業務名の一覧・止まる影響・準備したもの」の3点セットに揃えて、メールやチャットのような記録が残る形で改めて伝える方法があります。口頭の相談は流れやすく、記録に残すと組織の課題として扱われやすくなります。それでも再配分や時間確保の動きがないなら、それも改善の見込みを判断する材料の1つです。あわせて、上司個人だけでなく、人事や別の管理職に相談できる経路が社内にないかも確認しておきたいところです。
仕事が属人化しているのは自分の責任なのか
仕事が特定の人に集中する主因は、引き受けるほど速くなりまた依頼が来る循環と、切り出しを支える仕組みが組織にないことにあります。ベテランの判断を記録する組織的な仕組みがある企業は16.5%にとどまり、仕組みのない職場が多数派です(出典 株式会社taiziii「業務引き継ぎに関する実態調査」・従業員1,000名以上の大企業に勤務する管理職200名・インターネット調査・追加調査2026年3月16日実施)。抱え込む性格のせいと考えて一人で解決しようとするより、書き出しと相談を通じて仕組みの問題として扱うほうが、状況は動きやすくなります。
切り出しの第一歩は手順と判断を分けて書き出すことである
仕事が自分に集中するのは、引き受けるほど速くなりまた頼まれる循環と、切り出しを支える仕組みが会社側にないことが重なった結果であり、性格の問題ではありません。放置すれば、本人の長時間労働と緊張に加えて、周囲の都度確認や手戻り、組織の業務停滞へと影響は広がります。
個人でできる対処の中心は、業務を手順と判断に分けて書き出すことです。手順リストに「どんな条件で例外にするか」の判断メモを添えれば、仕事は渡せる形に近づき、休暇時の確認連絡も減らせます。上司には不満ではなく、自分が不在になると何が止まるかというリスクの形で伝えます。そのうえで、渡す相手と時間が用意されるかどうかは組織次第であり、切り出しの提案への反応は、辞めるかどうかを考える際の判断材料になります。辞める選択をする場合も、書き出したメモは短い引き継ぎ期間のなかで自分を守ります。休めない毎日をいまの形のまま続けることだけが、選択肢ではありません。
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