W H I T E P A P E R
2 0 2 6 年8 月
調達・在庫を
最適化する
戦略的に持つべき在庫を見極め、
発注を仕組み化する
Optimizing Procurement and Inventory:
Identifying Strategic Stock,
Systematizing the Order Process
P U B L I S H E D B Y
taiziii Research
Manufacturing DX Desk
© 2026 taiziii Research | Confidential
本書の位置付け
本書は、製造業のDX担当者(事業部のDX推進・調達・SCM・生産管理部門の部長・課長クラス)を読者
に想定した、調達・在庫最適化に関する実務レポートである。「在庫を減らしましょう」という掛け声
ではなく、どの在庫を戦略的に持ち、どの在庫を減らすべきか、そのためにどんな在庫モデルとポリシー
を設計し、発注をどう自動化し、製造とどう連携するかという技術的・実務的な具体に踏み込む。
調達・在庫管理は、長く「在庫は悪」という前提で語られてきた。在庫が増えれば運転資金が固定化さ
れ、保管コストもかかり、廃棄リスクも増える。この前提は半分は正しいが、半分は危ない。コロナ禍と
半導体不足を経て、世界中の製造業が痛感したのは、「在庫を持たない」ことのコストもまた大きいとい
う現実である。生産が止まれば、顧客への納期遅延、商機の喪失、信用失墜が一気に降りかかる。「在
庫を一律に減らす」という単純な処方箋は、もう通用しない。
本書が一貫して主張するのは、調達・在庫最適化の成否は「在庫を一律に減らすこと」ではなく「需要の
不確実性とリードタイムを踏まえ、戦略的に持つべき在庫を見極め、発注を仕組み化すること」で決ま
るという点である。在庫には、サイクル在庫・安全在庫・戦略在庫という3つの顔があり、それぞれ別の
論理で水準が決まる。これを区別したうえで、需要予測と発注ロジックを連携させ、ポリシーで自動化
し、製造とつなぐ ―これが地に足のついた最適化の道筋になる。なお本書は、需要予測やサプライチェ
ーン可視化とは別軸で、その間 ―予測と可視化の結果を踏まえ、日々の発注と在庫運用をどう設計する
か ―を扱う。
本書は公開情報および一般的な実装知見に基づく。記載する数値(在庫水準・サービスレベル等)は対象部品・運用によ
り大きく変動するため、絶対値ではなく相対的な傾向として参照されたい。
目次
1
なぜいま調達・在庫最適化なのか
在庫を「減らすもの」から「設計するもの」へ
2
在庫の3つの顔 ― サイクル・安全・戦略
それぞれ別の論理で水準が決まる
3
調達・在庫最適化の技術スタック
需要予測連携→ポリシー設計→発注自動化→製造との連携
4
「在庫一律削減」の罠 ―サービスレベルとのトレードオフ
JITは「在庫ゼロ」ではない。持たないコストもある
5
中小製造業に共通する4つの典型課題と処方箋
属人化・データ分断・サービスレベル不在・需要予測切り離し
6
業界横断の在庫戦略アプローチ ―類型整理
需要の不確実性×リードタイムで戦略は4つに分かれる
7
導入ロードマップと落とし穴
3分類整理から始める順序、定着のコツ、つまずき
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エグゼクティブ・サマリー
5つのキーメッセージ
調達・在庫最適化の成否は、在庫を一律に減らすことではなく、戦略的に持つべき在庫を見極め、発注を
仕組み化することで決まる。本書の要点を5つにまとめる。
1
コロナ禍と半導体不足を経て、在庫の捉え方は「減らすもの」から「設計するもの」へ転換した
長く「在庫は悪」という前提で語られてきた。しかしコロナ禍以降、半導体・原材料不足で生産が
止まり、JIT(ジャスト・イン・タイム)の脆弱性が世界規模で露呈した。コンサルへの相談も
「在庫を減らしたい」から「むしろ増やせないか」へと逆転。在庫はもう単に減らせばいいもので
はなく、戦略的に設計するものになった。
2
在庫には3つの顔がある。サイクル在庫・安全在庫・戦略在庫を区別して扱う
サイクル在庫は通常の発注・消費の循環で発生し、EOQ等で効率化する対象。安全在庫は需要変
動・納期遅延に備える保険的な在庫で、サービスレベルで水準を決める。戦略在庫は地政学リスク
や災害等の大規模リスクに備える在庫で、BCPと経営判断で持つべきか決める。それぞれ別の論理
で動かす。
3
技術の核は、需要予測連携→在庫モデル設計→発注自動化→製造との連携という流れ
需要予測の出力を取り込み、部品ごとに発注点(ROP)・安全在庫・EOQ・(s,S)ポリシーを設計
する。発注点を超えたら自動発注する仕組みを作り、勘ではなくルールで日々の発注を回す。さら
にMRP・かんばん・生産計画とつなぎ、調達と生産を一つの流れに統合する。
4
「在庫を一律に減らす」「サービスレベル100%」はどちらも罠。トレードオフを認める
サービスレベルを高めると、必要な安全在庫は指数関数的に増える。「100%にしたい」と言った
瞬間、コストは爆発する。一方で在庫を一律に減らせば欠品リスクが高まり、機会損失と信用失墜
を招く。JITは本来「必要な時に必要な量を」という発想であって「在庫ゼロ」ではない。コスト
と欠品のバランスを部品ごとに設計する。
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5
中小製造業には4つの典型課題がある。これを順に潰すだけで成果は大きい
(1) 発注の属人化、(2) 在庫データの分断(拠点ごとのExcel)、(3) サービスレベル不在(欠品率の
目標なし)、(4) 需要予測との切り離し(在庫補充が予測と無関係)。高度な需要予測AIや巨額の
ERP導入の前に、まずこの4つを順に潰す。地に足のついた現場改善の延長線上に、調達・在庫最
適化はある。
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01 なぜいま調達・在庫最適化な
のか
在庫を「減らすもの」から「設計するも
の」へ
K E Y F I N D I N G S
コロナ禍以前は「在庫を減らしたい」という相談が一般的だったが、コロナ禍以降は「むしろ確保
したい」へ転換
半導体・樹脂材等の原材料不足で生産が止まり、JITの脆弱性が世界規模で露呈した
在庫は単なるコスト要因ではなく、レジリエンスを支える戦略資産でもあるという両面が顕在化
「一律削減」でも「持てるだけ持つ」でもなく、設計する対象として在庫を捉え直す時代に入って
いる
1.1 在庫意識の逆転 ―コロナ禍前後
調達・在庫の議論は、長く「在庫は悪」という前提で進められてきた。在庫が増えれば運転資金が固定化
され、倉庫の保管コストがかかり、長く動かなければ廃棄ロスにもなる。教科書的にも、現場の実感とし
ても、在庫削減=善とされてきた。コンサルティングへの相談も、コロナ禍以前は「在庫を減らしたい」
という内容が圧倒的多数だった。
ところがコロナ禍を経て、この前提が大きく揺らいだ。世界経済が想定より早く回復し、需要が急増する
なかで、半導体・樹脂材・各種原材料の不足が一般のニュースになるほどの社会問題になった。製造業の
現場では、「在庫をむしろ増やせないか」「資材の在庫確保のためならいくら払っても構わない」という
相談が急増した。「在庫を持たない」ことが、生産停止・納期遅延・商機喪失という形で、別の大きなコ
ストを生むことに、多くの企業が直面したのである。
出所:各種コンサルティングコラムおよびメディア報道に基づき taiziii Research 作成
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1.2 JITの脆弱性が露呈した
この転換の象徴的な背景にあるのが、ジャスト・イン・タイム(JIT)生産方式の脆弱性が世界的に問わ
れたことである。JITはトヨタが磨き上げた、必要なものを・必要なときに・必要な量だけ作る生産管理
思想で、長く日本のものづくりの強みとされてきた。しかし、コロナ禍下のサプライチェーン混乱では、
効率化を追求しすぎたJITが物不足や流通混乱を深刻化させた、という見方が広がった。半導体不足が大
きな問題になった一因として、部品メーカー各社がJITによる在庫管理に依存しすぎたから、という意見
も生まれた。
ここで注意したい。JITは本来「在庫ゼロ」を意味するものではなく、「必要な時に必要な量を」という
発想である(この点は第4章で改めて扱う)。ただ実装の現場では、平準化・サプライヤーとの強固なパ
ートナーシップといった前提が崩れると、JITは在庫不足のリスクをそのまま現場に押し付ける。コロナ
禍は、この前提の崩れが世界規模で起きたときに何が起きるかを示した。
1.3 在庫は「設計するもの」へ
こうした文脈の中で、調達・在庫最適化の捉え方は変わってきた。在庫はもう「減らす」「持つ」の二択
ではない。減らすべき在庫、戦略的に持つべき在庫、その水準をどう決めるか ―こうした「設計」の対
象になった。需要の不確実性、リードタイムの安定性、サプライヤーの信頼性、サプライチェーンの集中
度。これらを総合的に判断して、部品ごと・状況ごとに最適な水準を設計する。次章以降、その具体を扱
っていく。
本書の立場:「設計」のための論理を持つ
「減らす」も「持つ」もそれだけでは答えにならない。重要なのは、どの在庫を、どの程度、なぜ持つ
のかを論理立てて決められること。本書は、その「設計のための論理」 ―在庫の分類、ポリシー設計、
運用の仕組み化 ―をひと続きで扱う。
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02 在庫の3つの顔 ― サイクル・安全・
戦略
それぞれ別の論理で水準が決
まる
K E Y F I N D I N G S
在庫を「3つの顔」 ―サイクル在庫・安全在庫・戦略在庫 ―に分類すると、扱いの違いが明確にな
る
サイクル在庫は通常の発注・消費の循環で発生する在庫。EOQで効率化する対象
安全在庫は需要変動や納期遅延に備える保険的な在庫。サービスレベルで水準を決める
戦略在庫は地政学・災害等の大規模リスクに備える在庫。BCPと経営判断で持つかを決める
2.1 「在庫」と一括りにしない
「在庫」と一言でいっても、その性質は一様ではない。本書ではこれを「3つの顔」に分けて扱う。それ
ぞれが別の役割を持ち、別の論理で水準が決まる。これを区別せずに「在庫を減らせ」「在庫を持て」
と議論するから、判断を誤る。
出所:在庫管理理論および各種コンサルティング知見に基づき taiziii Research 作成
2.2 サイクル在庫 ―効率化の対象
サイクル在庫(Cycle Stock)は、通常の発注と消費の循環で発生する在庫である。100個まとめて発注
すれば、消費に応じて在庫が徐々に減っていき、無くなる前にまた100個発注する ―この往復で常に倉庫
に存在する在庫がサイクル在庫だ。発注を1回するたびに発注費用(事務手数料・輸送費等)がかかり、
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在庫を持てば持つほど在庫維持費用(保管費・金利等)が増える。両者をバランスさせた最も経済的な発
注量を計算するのがEOQ(経済的発注量、Economic Order Quantity)で、サイクル在庫はこのEOQを
使った効率化の主な対象になる。
2.3 安全在庫 ―保険的な在庫
安全在庫(Safety Stock)は、需要変動や納期遅延に備えて、平均的な必要量とは別に常に持っておく保
険的な在庫である。需要が予測どおり来てくれて、納入も遅れなければ、安全在庫は不要だ。しかし現実
には予測は外れ、納入は遅れる。そのとき欠品しないために安全在庫を持つ。
安全在庫の量は、企業が「どの程度の欠品なら許容できるか」というサービスレベルで決まる。欠品許
容率5%(つまりサービスレベル95%)であれば安全係数1.65、欠品許容率1%(サービスレベル99%)な
ら2.33、というように決まる。一般的な計算式は安全在庫 = 安全係数 × 需要の標準偏差 × √(リードタ
イム + 発注間隔)。この式が示すように、需要のばらつき・リードタイムの長さ・欠品許容率の低さが、
安全在庫を増やす方向に効く。
2.4 戦略在庫 ―BCPと経営判断の在庫
戦略在庫(Strategic Stock)は、3種の中で最も新しく注目を集めている概念である。日々の需要変動で
はなく、地政学的リスク、大規模災害、感染症、サプライヤーの倒産といった「大規模かつ稀」なリスク
に備える在庫のことだ。安全在庫が「日々の保険」だとすれば、戦略在庫は「BCP(事業継続計画)の保
険」と言える。
戦略在庫の水準は、安全在庫のように数式だけでは決められない。何が起きたら事業が止まるか、止まっ
た場合のリスクと損失はどれくらいか、それを在庫でどこまで防ぐか ―こうした経営判断として水準が
決まる。半導体や希少素材のように、地政学的リスクが高く、代替が利きにくい品目では、平時の需要を
大きく超える水準で戦略在庫を持つ判断もありうる。コロナ後の議論で「在庫を増やす」と言われていた
のは、多くがこの戦略在庫を指していた。
戦略在庫だけは、数式ではなく「判断」で決まる
ここに、3つの顔の決定的な違いがある。サイクル在庫はEOQで、安全在庫はサービスレベルと標準偏差
で、いずれも数式に落ちる。だが戦略在庫だけは、持つか持たないか、どこまで積むかが、規定でも計
算でもなくその都度の経営判断で決まる。何を「起こりうる最悪」と見なし、どこまでを在庫で守るか
―この線引きは、ポリシー表にもERPにも現れない。この一点が、本書の最後(第7章)で効いてくる。
2.5 3種の区別が意思決定を変える
この3種の区別が、調達・在庫の議論を根本から変える。「在庫を減らす」と一括りにすると、本当は減
らせるサイクル在庫と、減らしてはいけない安全在庫・戦略在庫がごちゃ混ぜになる。経営層から「在庫
を減らせ」と言われたとき、現場が一律に減らすと、欠品が増え、結果として手戻りでより多くの在庫を
持つことになりかねない。3種に分けて、それぞれの論理で水準を決める ―これが在庫最適化の出発点で
ある。
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03 調達・在庫最適化の技術
スタック
需要予測連携→ポリシー設計→発注自動化→
製造との連携
K E Y F I N D I N G S
調達・在庫最適化は、需要予測連携→ポリシー設計→発注自動化→製造との連携の流れで実装する
発注点(ROP)=平均日販×リードタイム+安全在庫、これが在庫モデルの中核計算式
定量発注(一定数を割り込んだら発注)と定期発注(決まった周期で量を計算)の2方式がある
発注の自動化は、勘と経験に頼った属人的運用から、ルールベース運用への転換を意味する
3.1 4つの段階で捉える
調達・在庫最適化を、思いつきの改善ではなく再現性のある仕組みにするには、一連の技術スタックと
して設計する必要がある。
出所:taiziii Research 作成
3.2 需要予測との連携 ―起点を作る
すべての出発点は需要予測との連携である。何が・いつ・どれだけ売れるかの予測がなければ、いくつ発
注すべきかは決まらない。古典的な在庫管理では、需要を「過去の平均値+一定の余裕」で扱ってきた。
しかし需要のばらつきが大きいいま、過去平均では不十分で、需要予測の出力を直接取り込む形にする必
要がある。
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注意したいのは、需要予測と在庫最適化は別のテーマだが、密接につながっていること。需要予測の精度
を1ポイント上げる努力より、その出力を在庫補充ロジックに正しく連携させる土台のほうが、現場の成
果に効くことも多い。中小製造業では、需要予測そのものはエクセルの過去平均で済ませ、その代わり次
段以降のポリシーと自動化を整える、というアプローチも合理的である。
3.3 在庫モデルとポリシー設計 ―中核
技術スタックの中核が在庫モデルとポリシー設計である。部品ごとに「いつ・いくつ発注するか」のル
ールを設計する。代表的な方式が2つある。
定量発注方式(発注点方式、ROP方式)は、在庫が一定の水準(発注点)を下回ったら、決まった量を
発注する方式。発注点の計算は発注点(ROP)=平均日販 × 調達リードタイム + 安全在庫。たとえば
平均日販10個、リードタイム7日、安全在庫20個なら、発注点は10×7+20=90個になる。日々の在庫が90
個を割ったら、決まった量を発注する。汎用部品や標準品、消費が比較的安定している品目に向く。
定期発注方式は、決まった周期(たとえば週1回)で発注し、毎回の発注量を計算する方式。発注量=目
標在庫−現在在庫、目標在庫=日次平均需要×(リードタイム+発注周期)+安全在庫。需要の変動が大き
く、頻繁に発注量を調整したい品目に向く。
これに加えて、より高度な方式として(s,S)ポリシー(在庫がsを下回ったらSまで戻す発注を行う)や、
MEIO(Multi-Echelon Inventory Optimization、多階層在庫最適化)といった理論もある。複数の倉
庫や階層を持つ大企業では、全体最適のためMEIOが効くこともあるが、中小製造業ではまず定量発注ま
たは定期発注を確実に運用する方が現実的である。
3.4 発注の自動化 ―属人化からの脱却
ポリシーが設計できたら、発注の自動化に進む。発注点を超えた品目を自動で抽出し、決められた発注
量で自動発注をかける。発注ミスや発注忘れが激減し、夜中や休日でも自動的に動く。「あの担当者が
いないと発注が止まる」という属人化からも脱却できる。
自動化はシステム導入だけの話ではない。「どんな状態で人が介入するか」のルール設計も同時に必要に
なる。需要が急変したとき、サプライヤーから納期遅延の連絡があったとき、新製品の立ち上げで予測が
効かないとき ―こうした例外を機械任せにせず、人が確認して判断する仕組みが要る。自動化は人を排
除することではなく、定常業務を機械に任せ、人は例外と判断に専念できるようにすることである。
3.5 製造との連携 ―調達と生産を一つの流れに
そして最後に重要なのが、製造(工場)との連携である。調達と在庫だけで議論を閉じると、現場との断
絶を生む。製造側にはMRP(資材所要量計画)やかんばん方式があり、生産計画と部品調達のタイミン
グが連動している。調達・在庫最適化のシステムは、これらと統合される必要がある。
具体的には、生産計画から逆算した部品必要量を在庫システムに渡し、現在在庫から差し引いて発注量を
計算する。生産計画が変更されたら、部品発注も連動して変える。かんばんを使う現場では、かんばんの
動きから発注信号を生成する仕組みもある。調達は調達、生産は生産、と分けて運用していると、両者の
隙間に在庫が積み上がる。一つの流れとして設計することで、初めて全体最適が見えてくる。
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04 「在庫一律削減」の罠 ― サービス
レベルとのトレードオフ
JITは「在庫ゼロ」ではない。
持たないコストもある
K E Y F I N D I N G S
サービスレベルを高めると、必要な安全在庫は指数関数的に増える。「100%」を目指すとコスト
が爆発する
在庫を一律に減らせば欠品リスクが高まり、機会損失と信用失墜を招く
JITは本来「必要な時に必要な量を」という発想であり、「在庫ゼロ」を意味するものではない
在庫を持たないことのコスト(生産停止・納期遅延・商機喪失)も大きい。両側のコストを天秤に
かける
4.1 サービスレベル100%は不可能
調達・在庫の議論で最も誤解されがちなのが、サービスレベル(欠品しない確率)と必要な安全在庫の
関係である。「欠品を絶対に出したくない、サービスレベル100%にしたい」という要望は、聞こえは正
しい。しかし、これは実務上ほぼ不可能で、目指せば在庫が爆発する。
出所:在庫管理理論(正規分布に基づく安全係数)に基づき taiziii Research 作成
この曲線が示すのは、サービスレベルを高めると、必要な安全在庫は指数関数的に増えるという事実であ
る。サービスレベル90% なら安全係数1.28 、95% なら1.65 、99% なら2.33 、99.9% なら3.09 。
「99%→99.9%」のたった0.9ポイントの差で、必要な安全在庫はさらに大きく膨らむ。100%に近づこう
とすればするほど、コストは加速度的に伸びる。「100%にしたい」と現場が言ったときに、経営層が
「では在庫予算はいくらまで増やせるか」を一緒に議論できないと、現実的な意思決定にならない。
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4.2 サービスレベルは部品ごとに決める
この曲線を踏まえた現実的なアプローチが、部品ごとにサービスレベルを変えることだ。すべての部品を
同じ水準で守る必要はない。安全関連や顧客への影響が大きい部品は99%以上を目指し、汎用品や代替
が効くものは90%でよい、というように品目ごとに目標を決める。これにより、全体の在庫コストを抑え
ながら、本当に重要なところだけ高い守りを敷ける。
ここで重要なのが、サービスレベルを「明示的に決める」ことそのものだ。多くの現場では、サービスレ
ベルが暗黙のまま「欠品が出たら困る」「在庫が多いとコストがかかる」という曖昧な議論で揺れ動いて
いる。部品ごとに「うちはこの品目で95%の水準を守る」と決めれば、安全在庫は数式から自動的に決
まり、それを上回るか下回るかが評価できるようになる。第5章で挙げる「サービスレベル不在」が、中
小製造業の典型課題の一つになるのはこの理由による。
4.3 JITは「在庫ゼロ」ではない
もう一つの根強い誤解が、JITは「在庫ゼロ」という見方である。JITはトヨタが磨いた生産方式で、「必
要なものを・必要なときに・必要な量だけ作る」という発想だ。誤って「在庫を限りなくゼロに近づける
こと」と理解されることが多い。
JITの本質は「必要な時に必要な量を」であって、「在庫ゼロ」ではない。むしろJITが機能する前提とし
て、平準化生産(量・種類を均等にばらして生産すること)、強固なサプライヤーとのパートナーシッ
プ、リアルタイムの生産状況把握、地理的に近接した部品供給網がある。これらの前提が成り立つ場合
に、結果として在庫を最小限にできる、というのがJITの正しい姿だ。前提を整えずに「在庫を減らす」
だけ真似すると、欠品リスクが高まる。
「在庫を持たない」ことのコストもある
在庫はコストだ ―この見方だけでは半分しか見ていない。在庫を持たないことのコストもまた現実にあ
り、しばしば過小評価される。生産が止まれば、止まっている間の人件費・設備費は固定費として出て
いく。顧客に納期遅延を伝えれば信用が落ち、次の商機を失う。安全関連の重要部品が欠品すれば、ラ
イン全体が止まる。これらは在庫の保管コスト・廃棄ロスより、ずっと大きな損失になりうる。在庫の
「持つコスト」と「持たないコスト」の両方を天秤にかけてこそ、最適な水準が決まる。
4.4 「池の水と石」の比喩を再読する
トヨタ生産方式の有名な比喩に、「在庫を池の水、現場の問題点を池の底の石」に例えるものがある。在
庫が多いと水位が高く、石(=問題点)が見えない。在庫を減らすと水位が下がり、石が露出し、その問
題を一つずつ対処できる、という考え方である。これは在庫削減の効用を雄弁に語る古典的なメタファー
だ。
ただし、この比喩は文脈を見て読み解く必要がある。これは「サイクル在庫」を減らして工程の問題を発
見する文脈の話であって、安全在庫や戦略在庫まで一律に削るべきだとは言っていない。日々の発注・消
費の循環で生まれるサイクル在庫を絞っていけば、工程のばらつきや段取り替えのムダが顕在化する。こ
れは正しい。ただ、災害や地政学リスクに備える戦略在庫を「池の水」と同列に扱って削ると、池の底が
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見える前に、池そのものが干上がりかねない。古典的な改善哲学を、現代のサプライチェーンの不確実性
のもとで再解釈することが、いま求められている。
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05 中小製造業に共通する4つの
典型課題と処方箋
属人化・データ分断・サービスレベル不
在・需要予測切り離し
K E Y F I N D I N G S
中小製造業の調達・在庫管理には、業種を問わず繰り返し現れる4つの典型課題がある
発注の属人化、在庫データの分断、サービスレベル不在、需要予測との切り離し、の4つ
高度な需要予測AIや巨額のERP導入の前に、まずこの4つを順に潰すだけで成果は大きい
処方箋はそれぞれシンプル ―ルール化、一元管理、明示的設定、ロジック連携
5.1 業種を超えて繰り返される4つの典型課題
調達・在庫の領域で多くの中小製造業を見てきた知見を整理すると、業種・規模を問わず驚くほど同じ4
つの典型課題が現れる。本書ではこれを「4つの典型課題と処方箋」として整理する。自社がどれに当て
はまるか、いくつ当てはまるかを確認することから、改善は始まる。
出所:各種コンサルティング知見および公的支援機関の情報(J-Net21等)に基づき taiziii Research 作成
5.2 ① 発注の属人化
最も多いのが発注の属人化である。「あの人がいないと発注が止まる」「ベテラン担当者の頭の中にし
か発注ルールがない」という状態だ。経験と勘で発注量とタイミングを決める仕組みは、その人がいる間
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は機能しても、退職・休職・休暇のたびに業務が崩れる。さらに、属人化していると後輩の育成が進ま
ず、ノウハウは引き継がれない。
処方箋はシンプルで、第3章で述べたROP・安全在庫のルール化である。「平均日販×リードタイム+安
全在庫=発注点」という式を当てはめ、品目ごとに発注点を計算して登録する。これだけで、発注作業は
「在庫が発注点を下回ったらこの数を発注する」という機械的な手順になり、誰でも回せる仕組みに変わ
る。式の精度より、まず明示的なルールを置くことが価値を生む。
ただし、ルール化で型にできるのは「いつ・いくつ発注するか」という手順(What to do)までであ
る。属人化の本当に怖い部分は、その先にある。「この品目は、本当に欠品させてはいけないのか」
「代替は利くのか」「いま、このサプライヤーは危なくないか」――こうした例外の読み(How to
decide)は、発注点の数式には乗らない。ベテランが在庫を止めるか走らせるかを決めていたのは、た
いていこちらだ。ROPをルール化しても、この判断は引き継がれない。属人化対策は、発注の型化で半
分、残りの半分――例外を読む判断をどう残すか――は、別に手を打つ必要がある(第7章)。
5.3 ② 在庫データの分断
次に多いのが在庫データの分断である。工場・倉庫・営業部門でそれぞれが別のExcelやシステムで在庫
を管理しており、誰も全体像を把握していない、という状態だ。営業から「在庫はあるか」と聞かれた工
場が「ない」と答えても、実は倉庫にあった ―このような行き違いは珍しくない。
処方箋は単一の在庫マスタを作って一元管理することである。すべての拠点・部門が同じ在庫データを参
照する仕組みを作る。これは高度なERP導入が必須というわけではなく、Excelを共有フォルダで運用し
ても、クラウドの在庫管理サービスを使っても、要は「一つの真実のデータ」を全社で共有することが要
点である。データの分断を解消するだけで、調達と販売のミスマッチが大きく減る。
5.4 ③ サービスレベル不在
第4章でも触れたサービスレベル不在。多くの中小製造業では、欠品率の目標が明示的に設定されていな
い。「欠品を出したくない」「在庫が多いとコストがかかる」という曖昧な議論で在庫水準が決まり、担
当者の感覚で揺れ動いている。これでは安全在庫の合理的な計算もできず、過剰在庫と欠品の両方が交互
に起きやすい。
処方箋は部品ごとにサービスレベルを明示的に設定すること。重要部品は99%、汎用品は90%、という
ように品目ごとに目標を決める。決めれば、安全係数も数式から決まり、安全在庫量も計算できる。さら
に「目標サービスレベルを実際に達成できているか」を測れるようになり、PDCAサイクルが回り始め
る。
5.5 ④ 需要予測との切り離し
最後が需要予測との切り離しである。営業部門で需要予測を作っていても、それが在庫補充の判断に使わ
れていない。逆に、在庫担当者が独自に「過去平均」で発注しており、営業の予測情報を見ていない、と
いうケースも多い。両者が連携していないと、せっかくの予測情報が活用されない。
処方箋は需要予測→在庫補充ロジックの連携である。営業が出した予測を在庫システムに渡し、発注点や
発注量の計算に反映させる仕組みを作る。高度なシステム統合がなくとも、月次で営業予測をExcelに転
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記し、安全在庫を見直すだけでも効果がある。連携の方法より、「予測情報を在庫判断に使う」というル
ーチンを作ることが要諦である。
5.6 まずこの4つを順に潰す
4つを並べると当たり前に見えるかもしれない。しかし、多くの中小製造業がこれらを未解決のままにし
ているのもまた事実だ。高度な需要予測AIや巨額のERP導入の前に、まずこの4つを順に潰す。それだけ
で、調達・在庫管理の質は劇的に改善する。地に足のついた現場改善の延長線上に、調達・在庫最適化は
ある。次章では、業界・部素材タイプによって最適なアプローチが分かれることを見ていく。
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06 業界横断の在庫戦略アプロー
チ ―類型整理
需要の不確実性×リードタイムで戦略
は4つに分かれる
K E Y F I N D I N G S
「最適な在庫戦略」は一つではない。需要の不確実性とリードタイムの組み合わせで戦略が分かれ
る
需要↑×LT↑の領域(自動車部品・半導体)は戦略在庫+代替調達先確保が要
需要↓×LT↓の領域(汎用部品・標準品)は発注点(ROP)による自動化で十分
自社の品目構成を象限にマッピングすると、それぞれに合った戦略が見えてくる
6.1 戦略は一つではない
本書ではここまで、調達・在庫最適化の論理を整理してきた。重要なのは、すべての業種・すべての品目
に同じ戦略が当てはまるわけではないことだ。高い精度の需要予測が要る業界もあれば、シンプルな発注
点運用で十分な業界もある。戦略在庫を厚く積む必要がある品目もあれば、その必要がない品目もあ
る。
この違いを整理する軸が「需要の不確実性」と「リードタイムの長さ」である。この2軸でマトリクスを
切ると、業界・部素材タイプごとの最適アプローチが4つの類型に整理できる。
出所:taiziii Research 作成
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6.2 左上:需要↑×LT↓ ―消費財・小売・EC
左上は、需要は変動するが、リードタイムは短い領域。消費財・小売・ECなどが該当する。トレンド・
季節・キャンペーンで需要は大きく揺れ動くが、補充は比較的早くできる。
この領域での戦略は需要予測の精緻化+機動的な発注。リードタイムが短い分、戦略在庫より「予測を当
てて素早く動く」ことに価値がある。AIによる需要予測の精緻化や、店舗・ECチャネル別のリアルタイ
ム在庫管理が効くのはこの領域だ。
6.3 右上:需要↑×LT↑ ―自動車部品・半導体
右上の象限は、需要の不確実性が高く、リードタイムも長い領域だ。代表例が車載半導体や、自動車向け
の特殊部品。需要は景気・モデル切替・規制で大きく変動し、半導体や特殊素材のリードタイムは数ヶ
月〜1年に及ぶこともある。「予測しにくく、欠品が起きたら回復に時間がかかる」最も困難な領域であ
る。
この領域での戦略は戦略在庫+代替調達先確保。日々の安全在庫だけでは足りず、地政学リスクや災害も
想定して、戦略在庫を厚めに積む。同時に、代替サプライヤーや代替部品を事前に評価しておき、有事に
切り替えられる体制を作る。コロナ後の自動車業界の取り組みは、ほぼこの方向にある。
6.4 左下:需要↓×LT↓ ―汎用部品・標準品
左下は、需要も安定し、リードタイムも短い領域。汎用部品・標準品・消耗品などが該当する。最も
「シンプル」に見える領域だが、品目数が多くなりがちで、管理コストがかさみやすい。
この領域での戦略は発注点(ROP)による自動化。複雑な需要予測も戦略在庫も要らない。発注点を計
算して、それを下回ったら自動発注する仕組みを作るだけで、十分に機能する。むしろこの領域に高度な
システムを当てはめると、過剰投資になる。
6.5 右下:需要↓×LT↑ ―化学・素材・重工業
右下は、需要は安定しているが、リードタイムは長い領域。化学品・基礎素材・重工業の主要原材料など
が該当する。長期契約や大ロットでの調達が一般的で、需要も比較的読みやすい。
この領域での戦略はEOQ重視+長期契約で安定化。発注費用と在庫維持費用のバランスを最適化する
EOQが効くのがこの領域である。さらに、サプライヤーとの長期契約や複数調達先確保により、供給を安
定化させる。
6.6 自社の品目構成を象限にマッピングする
この4類型は、業界全体を整理するだけでなく、自社の品目構成をマッピングするのにも使える。多くの
企業の品目は、すべてが同じ象限に入るわけではない。汎用品もあれば、特殊半導体もあり、安定原材料
もある。それぞれに合った戦略を、品目グループ別に当てはめる ―これが、業界の知見を自社の実務に
落とし込む第一歩になる。
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07 導入ロードマップと落と
し穴
3分類整理から始める順序、定着のコツ、つ
まずき
K E Y F I N D I N G S
導入は「在庫の3分類整理→ポリシー設計→発注の自動化→製造との連携」の4段階で進める
全品目を一斉ではなく、典型課題が大きい品目から段階的に着手する
高度な需要予測AIや巨額のERPの導入は、土台が整ってからで遅くない
典型的なつまずきは、一律削減への逃避、サービスレベル不在、データ分断の放置、製造連携の欠
如
7.1 4段階のロードマップ
調達・在庫最適化は、一足飛びに高度なシステムを目指さず、土台から段階的に積み上げる。
出所:taiziii Research 作成
Phase 1:在庫の3分類整理。部品をサイクル在庫・安全在庫・戦略在庫の3種で分類し、現状の在庫水準
を測る。一律に「在庫が多い・少ない」と論じるのをやめ、種類別に見ることが出発点である。Phase
2:ポリシー設計。部品ごとに発注点(ROP)・安全在庫・サービスレベルを計算・設定する。発注ルー
ルを明文化し、属人化から脱却する。Phase 3:発注の自動化。システムで発注点を監視し、自動発注を
かける仕組みを作る。例外(需要急変、納期遅延等)だけ人が判断する設計にする。Phase 4:製造との
連携。MRP・かんばん・生産計画と統合し、調達と生産を一つの流れに統合する。また、調達リードタ
イムそのものの短縮も継続課題として取り組む。
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7.2 定着のコツ ―「品目ごとに違う」を受け入れる
調達・在庫最適化が定着するかどうかは、「品目ごとに違う扱いをすることを受け入れられるか」にかか
っている。全品目を同じルールで管理すると、シンプルな代わりに、重要部品では過小、汎用部品では過
剰の状態が生まれやすい。第6章の類型に照らして、品目グループごとに戦略を変える ―この多様性を運
用できる組織になることが、調達・在庫最適化の成熟度を決める。
また、定着の鍵としてサービスレベルと在庫回転率を経営管理サイクルに載せることも忘れてはいけな
い。月次・四半期で部品グループごとのサービスレベル達成率と在庫回転率をレビューし、目標との乖離
を分析する。計測・予測を業務に組み込み、改善ループを回し続けることが、調達・在庫管理に限らず製
造業DXの一般原則である。
典型的な4つのつまずき
① 一律削減への逃避:経営層の「在庫を減らせ」という指示に対し、3分類せずに一律削減してしま
う。欠品リスクが高まる(第2章・第4章)。② サービスレベル不在のまま:欠品率の目標を明示的に設
定しないため、安全在庫の合理的な計算ができない。部品ごとに目標を決める(第4章・第5章)。③ デ
ータ分断の放置:拠点・部門ごとにバラバラのExcelで在庫管理を続け、全体像が見えない。一元管理を
最初に整える(第5章)。④ 製造連携の欠如:調達・在庫だけで議論を閉じ、MRPや生産計画と連動し
ない。両者を一つの流れに統合する(第3章)。
7.3 まとめ ―「設計する」在庫管理へ
本書を通じた主張は一貫している。調達・在庫最適化の成否は、在庫を一律に減らすことではなく、(1)
在庫の3つの顔を区別し戦略的に持つべき在庫を見極めること、(2) 部品ごとにポリシーを設計して発注
を仕組み化すること、そして(3) その仕組みを製造と連携させ経営管理サイクルに載せることという、技
術以前の3点で決まる。在庫はもう「減らすもの」ではない。「設計するもの」である。
着手にあたっては、全品目を一斉に変えようとせず、第5章で挙げた4つの典型課題のうち、自社で最も影
響が大きいものを1つ選んで、その品目だけで小さく始めることを推奨する。明日からの一歩は、自社の
主要部品を10〜20品選び、それぞれをサイクル・安全・戦略の3種に分類してみることである。それだけ
で、これまで一括りに語っていた「在庫」の見え方が変わってくる。
そして、ここまで設計しきってもなお、最後に人へ残るものがある。発注点も安全在庫もサービスレベル
も、決めてしまえば数式に乗る(=設計=ここまでの主題)。だが、戦略在庫を持つか、サービスレベル
を95%にするか99%にするか、需要が急変したとき発注を止めるか走らせるか――こうした最後の線引
きは、人の判断で決まる。しかも、その判断の理由は、ポリシー表にもERPにも残らない。担当者が退け
ば、数字だけが残って、なぜその水準にしたかは失われる。最適化の本丸は、ポリシーで埋まる部分では
なく、その外側に残るこの判断をどう引き出し、構造化し、次へ継ぐかにある。
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taiziii が提供する判断力の継承サービス SkillRelay(スキルリレー)は、発注ポリシーやサービスレベ
ルの設定では埋まらない「戦略在庫を持つか」「この品目を欠品させてよいか」「急変時に止めるか走
らせるか」という、ベテラン調達担当の判断を、なぜそう判断したのかという理由ごとAIで引き出し、
帰属を保ったまま条件付きルールへ構造化し、組織の判断知として継承します。判断を平均したり、一
本の正解に統合したりはしません。例外は例外として残します。AIは判断を代行せず、引き出し、分類
し、問い返し、継承を助ける裏方に徹します。
詳細:https://taiziii.com/skillrelay/